2014年9月20日

店主:宝飾職人の危機感2

・指輪に黒いスジが出てきた!?

・指輪をはめると指が痛い!!

・修理を断られた・・・?


こんにちは、お久しぶりです。
今回は、「~加工技術・修理技術~について」をお客様の声を交えてご紹介します。


自画自賛




最近、ご来店頂くお客様から『指輪に黒いスジが出てきた』、『指輪のサイズは合っていると思うのだけれどはめていると指が痛い』といった声をよく耳にします。



●『指輪に黒いスジが出てきた』 というのはロー付けの跡です。






原因として考えられるのは




指輪の素材(プラチナ・金・ホワイトゴールド)に関わらず、銀ローを使用してロー付けされているのではないでしょうか?




金の指輪に銀ローを使うと明らかに色の違いが分かると思いますが、磨いて光らせることで一見分かり難くなるのです。けれど、はめているうちに光沢がなくなってくるとロー付けの跡が見えて
『黒いスジが出てきた』 となるわけです。




銀と同系色のホワイトゴールドやプラチナであっても、微妙な色の違いが出るのでロジウムメッキを
して仕上げている様で全く分からなくなっていますが、やはり年月により小傷が付いたりして磨いてもらったときにメッキが剥がれてスジが出てしまうのです。








●銀ロー以外に何かあるのですか?




Pロー(プラチナ用)、金ロー(金用)、ホワイトロー(ホワイトゴールド用)、銀ロー(銀用)とそれぞれの地金に合ったローがちゃんとあります。








●なぜ銀ローが使われるのですか?




Pローは、1200℃、金ローは800℃以上でないと溶けません。
地金が溶けるにはさらに100℃~200℃程の違いがあるのですが、1800℃のガスバーナーの火を当ててローだけを瞬時に溶かす技術ローが溶けるほんの一瞬のタイミングを見計る技術をマスターしていないと地金まで溶かしてしまう事になります。


未熟な技術でロー付けをしようとすると地金にまで高熱が加わり、地金がはじけてケガをしたり、指輪についている宝石にまで熱を加えてしまい変色させてしまうなど、修復不可能な事態を招いてしまうのです。


けれど、銀ローを用いれば600℃と他のローに比べて低い温度で溶かせ、地金にダメージを与えることなく比較的簡単にロー付けできるので銀ローが使われることが多い様です。




★ここで一つ自画自賛★


私は、プラチナの地金にはパラローを使うようにしています。


プラチナに混ぜるときに使うパラジウムのローなのですが、プラチナの地金とほぼ同じ色調なのでロー付けの跡が分からないくらい綺麗に仕上げることができます。


けれど、地金とほとんど変わらない温度でしか溶けないローなので地金を溶かしてしまう危険度が高く、使いこなせる職人は滅多にいないでしょう。




●『サイズは合っているのに指輪をはめると指が痛い』 というのは単純に加工が下手なのです。


原因として考えられるのは


サイズ直しの際、糸ノコで真っ直ぐに地金が切れていないと合わせた時に隙間ができてしまいますし、指輪のカーブに合わせて切れていないとズレが生じるのです。


そのまま無理にロー付けをしても、指輪のラインに沿ったヤスリ掛けが出来ず段が付いたり、無理に地金を削って薄くしてしまっているのをよく見かけます。


未熟な加工技術のせいではめた時に指にくい込んで痛いのです。




★ここでもう一つ自画自賛★


私の作った指輪をはめられた方は、痛くないし違和感もないし、何よりはめている感じがしない とおっしゃいます。
『指輪は痛いから』 とはめるのを躊躇されていた方でも、はめてみると全然大丈夫だったと言って下さいます。


私がこの子ならと思って作らせた教え子の指輪でも、私が作った指輪をはめておられるお客様には違いが分かるらしく、はめ心地が良くないからと作り直しを頼まれます。
見た目には私が作る物とさほど違いはないと思うのですが・・・指導者として考えさせられました。




●『修理してもらおうと思ったのに断られた』 という声も最近特によく耳にします。


〝 加工技術の未熟さ 〟が原因ではないでしょうか。


修理に必要なのが〝ロー付け〟の技術です。
ひとくちにロー付けと言っても、ロー付けの前後に必要な〝糸ノコとヤスリを使う技術〟が未熟ですと綺麗な仕上げは出来ません。すべてが出来て〝修理〟が出来るのです。


技術が未熟かどうかは、本人が一番良く知っているはずですから修理を頼まれても受けられずに断っているのでしょう。


細かい作りの品物や高価な品物なら、なおさらではないでしょうか。
昔の品物で手作りしてある物なら特に要注意です。
価値ある品、高価な品を一瞬にして潰してしまう危険があるからです。
むしろ、断ってくれた方が良心的だと言えるでしょう。















(ここまで)



私は、自分の技術を自負しております


恩師から受け継いだ日本屈指の技術を現代のニーズに合うよう私なりに進化させ完成させたオリジナルの技術で作品を提供し、一人でも多くの方に喜んで頂きたいと思っております。


さらに、この技術を次世代へ伝承したいという思いで後継者と成り得る職人の育成に試行錯誤しながら日々奮闘しております。


宝飾の事で困っておられたり、悩んでおられる方は、どんな事でもお気軽に一度ご相談ください
お役に立てるかもしれません。




今回はここまでにして、次回は「~ヤスリかけ~について」をお話ししたいと思います。











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