2012年4月29日

宝石業界いろはの「い」 ~世界と日本の違い(2)~


・日本市場には財産価値のある宝石(ジェム)はない

・日本にジェムがないのは日本人が宝石について知らなさすぎるから

・日本の宝石屋(プロ)はジェムがどれかという目利きができないでいる



こんにちは、Web担当の方の斎藤です。
前回に引き続き、世界の宝石業界と日本の宝石業界がどれだけ違うのか、
何が違うのかに関連して、日本にジェムがない理由をご紹介します。
この記事はシリーズになります。前回の記事はこちら


日本にジェムがない理由

さて、前回、財産になる宝石はジェムだけであり、そのジェムは日本にはないとお話ししました。
「ない」というのは日本の宝石市場には「ない」ということです。
ではなぜ、ジェムはないのか。

そもそも、日本では宝石は基本的に「輸入品」です。
国内で生産できる宝石といえば、真珠と珊瑚くらいですね。

ということで、つまり、日本市場に出回らないということは、
ジェムは海外と日本とで取引されていないということになります。
「なんで取引されていないの?」と思われるかもしれませんが、
取引されなくなったのは今の話で、それも意外と最近の話のようです。

店主兼職人の方の齋藤、もとい、私の夫が聞いた話だと、
戦前くらいまでは日本市場にもジェムはあったそうなんです。
ちなみに日本の宝石業界史上、最もキラキラと輝いて美しかったダイヤモンドは、
だいたい35年くらい前の頃に出回っていたものがそうだという話です。

<-- こぼれ話 -->
余談になりますが、仮にもし、いま日本にそのようなジェムが存在するとすれば、
個人での持ち物だけになると思います。
それはその頃におじいさまかおばあさまがお買い求めになって、
大事に大事に持っていらっしゃるか、子孫の誰かが受け継いでいらっしゃるか、
というケースだと思いますよ。


そういう方は、ぜひ売らずに大事に「家宝」だと思って、子々孫々に受け継いでいってください。

今ではもう絶対にお目にかかれませんし、ぜひ欲しいと思っても、
もう手に入らない幻の類となってしまっています。
そもそも今売ってしまっても、買い取り基準がめちゃくちゃなので
安く買い叩かれて損をしてしまいます。
<-- ここまで -->

話を戻しまして、「日本でジェムの取引がなくなってしまった理由」です。
原因は日本の宝石業界の「勉強不足」にあります。

ご存知でしょうか?
日本では宝石のプロを名乗ろうと思えば、あなただって今日からでも名乗れるんです。
なぜって、資格も何もいらないんですから。
海外の宝石業界はそうではなく、
プロを名乗るにはものすごく勉強して厳しい条件の下に資格をとる必要があります。
日本で宝石を扱っている人(=プロ)というのは、
言葉は悪いかもしれませんが、ほぼこのような「素人上がり」になります。
海外と日本ではそもそも宝石屋になれるハードルが全然違うわけですね。
おおむね、宝石についての知識量や扱う責任は大人と子供くらい違うと思ってください。

日本の宝石業界は、宝石の本当の扱い方を知らないで商売しているわけです。
となると、当然色々問題も起こってくるわけです。
昔の日本の宝石業界は、今と違ってきちんと勉強して、
宝石のなんたるかをしっかりと学んでいた方たちでしたから、
海外との取引でジェムも扱わせてもらえていました。
きちんと宝石について価値の説明もできたし、宝石はどういうものがいいものかも、
もちろんちゃんと目利きできたのです。

ところが、問題は今の宝石業界の人たちです。
不勉強な上に、不勉強ゆえに目利きもできません。
日本では、宝石のプロになるのに、もともと資格も何もいらないわけですから、
勉強しなければ海外のプロとの知識量は、どんどん差が開いていってしまうわけです。
その結果、色々と問題を起こしてしまったようです。

問題というのはおおむね、
宝石業界の中で「やってはいけないことをやってしまった」、というルール違反ですね。
海外の宝石業界も、最初はそんな日本に目をつむってくれていました。
ですが日本側はそういうルールがあることも、
自分たちがルール違反していることすらわかっていないわけですので、
同じようにルール違反を何度も繰り返すわけです。
そういうわけで、とうとう「もう日本を相手にするのはよそう」と、
徐々に海外の宝石業界から相手にされなくなってしまったのです。


一連をたとえると、なんとなくこんな感じでしょうか。
仕事の取引相手(日本)が自分(海外の宝石業界)を馬鹿にしているんです。
でも相手は自分を馬鹿にしていることに気づいていないんです。
なんて失礼な奴だ、と普通は怒って取引をやめてしまうでしょう。
ここでは取引はやめなかったけれど、どうせ見てもわかっていないからと
取引の内容を質の低いものに変えた、ということです。
つまり、相手は物の価値も見方もよくわかっていないので、
上質なリンゴが傷物のリンゴに変わってもわかっていない、という話です。

このように取引の内容に重大な変化が起こっているというのに、
日本の方はまったく気がついていないわけです。


つまり、日本の宝石業界が宝石について勉強しなさすぎて、
何度も無自覚に問題を起こしてしまい、海外の宝石業界を怒らせてしまったわけです。
その結果で現状、世界から日本だけ、
ジェムを取引してもらえないという「仲間外れ」にされています。
でも、その仲間外れにされているということさえも、
日本の宝石業界は全然わかっていない、ということです。
わかっていないから、ジェムの取引はもうずっとなくなってしまったんです。
これが「日本にジェムがない理由」です。
詳細に説明するとすごく長くなるので、ものすごくざっくり説明しました。

まとめると、

日本の宝石業界(プロ)は、大体が宝石のことを全然知らないということです。
日本にジェムがない原因は、
プロが、「プロなのに」その宝石ひとつひとつについて、
その価値について説明も、目利きもできなくて、どれがジェムかわかっていないから
日本にジェムが入ってこなくなってしまったんだ、ということです。


今回はここまでにして、次回は「仲間はずれの影響はあなたにも」についてお話しようと思います。

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