2012年11月12日

いろはの「い」 ~宝石の3つのクオリティとは?~


・クオリティとは宝石の「品質」のこと

・「品質」とは主にその宝石の透明度の差のこと

・宝石はクオリティによってその用途が決まっている


こんにちは、Web担当の方の斎藤です。
今回は予定を変更して、技術編(1)の続きの前に、
少し「宝石のクオリティとは何なのか」についてお話ししようと思います。

宝石のクオリティとは何か

うっかり基本で一番大事なことを忘れていました。
これまで宝石について基本的と思われる情報をつらつら記事にしてまいりましたが、

「クオリティって結局なに?」

「どんなのがジェムクオリティなの?」

「ジュエリーとか普通の宝石と何が違うの?」

というような疑問を皆様お持ちかもしれませんね。

私ども自身は、このようなことは宝石屋として
知っていなければならない常識とも言える知識なんですが、
それゆえに「このぐらいならみんな知っているものだろう」という先入観があって、
どうも一般の皆様が何を知りたいのか、疑問に思われるのか、
ちょっと予想がついていない状態です。

よろしければ「こういうことが知りたいんだよ」とお声を頂けると助かります。


では本題にまいりましょう。

まず、今まで話の中で何度も出てきた「クオリティ」というのは、
つまりはその石の「品質」のことです。

採掘された宝石は、まずその品質の差によって、
アクセサリークオリティ・ジュエリークオリティ・ジェムクオリティ
の3つのどれかに必ず仕分けられます。



つまり、
品質のものすごく良いものが、
ジェムクオリティ

ジェム未満ではあるが良いものが、
ジュエリークオリティ

ジェムとジュエリー以外の他すべてが、
アクセサリークオリティ
ということです。
比率にすると左図のような感じになります。



さて、「クオリティ=宝石の品質」とわかりましたが、その「品質」とは何なのか。

クオリティが決まるタイミングは採掘されてすぐ、「原石の時」です。

磨きもカットもしない状態で、何を見てクオリティを決めているのか?
答えは、主にその「透明度」、色石なら「色」もです。

「色」の話まですると話が複雑になるので、今回はちょっと置いておいて、
今は一にも二にも、宝石はその「透明度」が高いものほど「美しい
ということだけ念頭に置いておいてください。

つまり、ジェムクオリティやジュエリークオリティになる原石は、
採掘された時点で、とても透き通った美しい原石なのです。
「持って生まれた美しさ(透明度)」というものですね。

そうして採掘されたその美しい原石は、
現地の人のその磨き上げられた眼識によって、
ジェムクオリティなのか、ジュエリークオリティなのか選別されるのです。

つまり宝石の「品質」は、「原石の時」に現地の人の「目」によって決定されるんですね。
タイとか、現地の人の「目」は、それこそ星の数ほど宝石の原石を見ているわけですから、
目利き的な意味でも、そして視力的な意味でも日本人よりはるかにいいので、
その選別は、とても正確で信頼のおけるものです。

「クオリティの違いってそんなに違うものなの?」と思われた方のために、
ちょっとこのクオリティの透明度の差がどれほど違うのか、
身近なもの、たとえば「水を入れたコップ」で表現してみましょうか。
それぞれクオリティに合わせたコップを選ぶとこんな感じです。

ジェムクオリティ      : 透明なガラスのコップ
ジュエリークオリティ   : 透明なガラスコップにラップを何枚か(1~2枚くらい)巻いたもの
アクセサリークオリティ  : 牛乳を飲んだ後の上記のコップ

それぞれのコップを横から見ると、背景の見え方が全然違ってきますよね。
この透明度の差が、それぞれ3つのクオリティの差だと思ってください。
並べると違いがよくわかると思います。

色石はこれにちょっとずつ同量のカラーインクでも垂らしてみてください。
まあ色がつけばいいので、お茶とかウイスキーとか、
濁ってない透明なジュースでもいいんじゃないでしょうか。
そうすると色がついたところで、透明度は変わらないことがお分かり頂けると思います。

ところで皆様、
「透明度の差はわかったけど、光り方なんて磨けば変わる」とか、
「どんな石もカットすればきっとキラキラする」なんて思ってらっしゃるかもしれませんね。
でもちょっと考えてみてください。

たとえるなら料理と同じです。
素材が良ければよりおいしいものが作れる。
だから専門店は素材からこだわるわけです。
素材がよければ、仮にプロの料理人ではなく普通の主婦が料理したって、
そこそこおいしいものが作れるでしょう。

でも腐った素材で料理したとしたらどうですか?
腐った野菜や肉なんかで料理を作ったって、とても食べれたものではないでしょう?
プロが作ったって腐ったものを、食べれる料理に「変身させる」ことはできません。
それと同じです。

宝石の透明度にこだわる理由は、透明でなければ、
いくら反射するように計算してカットしても、光は思ったように反射してくれず、
結果的に石が光らないからです。
宝石が本来持つべき、キラキラ鋭い光にはならないんです。

透明度の高い宝石が持つキラキラ鋭い光が、カーテン全開のガラスの窓だとするなら、
透明度の低い宝石が持つ弱い光は、カーテン全開でもすりガラスの窓です。

要するに、磨きもカットも言ってみれば、最終的に人間側で施す「化粧」です。
もともと、そのような研磨技術やカット技術は、
美しいものをさらに美しく見えるようにするために考えられた加工技術なのです。

ですから、ジェムクオリティは言うまでもなく、すっぴん(原石)でも美しい。
でも磨いて化粧、カットしてドレスアップすると、
美しいお嬢さんが、さらに美しいお嬢さんになるというだけの話です。

ジュエリークオリティも、ジェムには劣りますが、
美しいことには違いありませんので、
磨いてカットしてやれば、美しいお嬢さんの出来上がりです。
もとが良ければさらに美しくなるのは変わりません。

ですが、アクセサリークオリティは
もとの素材が悪いので、後からどれだけ化粧しようとも、
残念ながら光り輝く美しさにはなれない石なのです。


お分かりいただけたでしょうか?
つまり、一言でまとめるなら「クオリティ=原石の品質」の違いってことです。
クオリティに何度も言及するのは、
本当に良い宝石を買うためには、「良い宝石は素材から違う」ということを知らなければ、
全く見当違いの買い物をしてしまうことになりかねないからです。

どういうことかというと、宝石はそのクオリティによって用途が違うのです。

ジェムクオリティの石は、
主に加工はされずルースのまま、観賞用の宝石として使われます。

ジュエリークオリティの石は、
文字通りジュエリーなど高級貴金属の装飾用の石として使われ、

アクセサリークオリティの石は、
ジュエリーよりも安価なファッション用貴金属の装飾用の石として使われるのです。

つまりクオリティによる「役割分担」です。
そしてそれぞれの用途は、
いわば専門職のようなもので独立しており、互いに絶対不可侵、
アクセサリークオリティの仕事は、アクセサリークオリティの石だけ、
ジュエリークオリティの仕事は、ジュエリークオリティの石だけ、
ジェムクオリティの仕事は、ジェムクオリティの石だけができるものと決まっています。

宝石文化はそもそも西洋からの輸入物ですので、
西洋文化の「階級社会」のしきたりが、
宝石の世界にも当てはまる、と思っていただければいいと思います。

つまり間違っても、アクセサリークオリティの石がジュエリーに使われたり
ジュエリークオリティの石が観賞用宝石にはなれませんし、
してもいけません、ということです。
医師免許を持ってないのに、医者をやるのと同じことです。
そもそも資格がないのです。

このように厳しく秩序を守ることで、宝石そのものの価値が守られているのです。

そう考えると、日本でジュエリーに
アクセサリークオリティの石が使われていることは、
とても看過できることではないんですよね。

ともあれ、これで皆様にも「クオリティ」が、
宝石において、いかに無視できない重要な要素であるか、
なんとなくお分かりいただけたのではないでしょうか?

皆様が宝石をご購入の際は、まずご自分が、
身を飾る装飾品を探しているのか、資産にするために探しているのかなど
「どのような用途の宝石をお探しなのか」
目的を明確にした上でお探しにならないといけません、ということです。

そうすると、目的の宝石はジュエリークオリティであるとか、
ジェムクオリティであるとかがはっきりすると思います。

仮にジェムクオリティをご希望だったとして、
今までの話で「クオリティ」について十分にご理解頂けたのであれば、
どこに探しに行くべきかそうでないかは、なんとなく見当がつくはずです。

当然「ジュエリーを扱っているお店」ではないことは分かりますよね。
うっかり間違って入ってしまっても、
そこで「この宝石は高品質なんですよ」とすすめられたものは、
あなたのご希望のクオリティではないことも、きっともうお分かりになっていることでしょう。

遅筆で申し訳ありませんが、これからも少しずつ
お役に立てるような情報を提供してまいりますので、
ぜひ皆様一緒に「宝石の買い方マスター」目指しましょうね!

ということで、今回のまとめ

「クオリティ」とは宝石の「原石の品質」のことであり、
宝石はそのクオリティによって用途が違います。

そして、皆様が宝石をお買い求めになるときは、ご自分の用途に合わせて、
まずその宝石の「クオリティ」を選ぶことが必要だということです。

つまり、「価値のある良い宝石」は、原石(素材)からして上質であり、
ジェムクオリティとして他のクオリティとは
厳格に明確に分けられているので、上質の宝石が欲しければ、
ジェムクオリティというグループの中から探す必要がある、
ということです。


次回も、都合により予定を変更して「宝石の色の見方について」お話ししたいと思います。

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