2012年7月20日

宝石業界いろはの「い」 ~世界と日本の違い(5)-1~


・宝石を見る目を養うには「ジェム」を見ることが一番の近道

見るのは一つをじっくりでもいいし、ウィンドウショッピングのように数を流し見でも構わない

宝石を見る目はいわば感覚なので、覚えれば忘れるようなものではない


こんにちは、Web担当の方の斎藤です。
前回に引き続き、
世界の宝石業界と日本の宝石業界がどれだけ違うのか、何が違うのかに関連して、
「宝石を見る目を養うには」についてご紹介します。
この記事はシリーズになります。前回の記事はこちら


どうすれば宝石を見る目を養えるか (前編)

さて、前回、日本人は宝石を見る目がないので、
価値のある良い宝石を買うためには、見る目養うことが一番の近道である、とお話ししました。

では、どうすればその宝石を見る目を養うことができるのか?
今回は話の構成上、同テーマを前後編に分けてご紹介したいと思います。


どうすれば宝石を見る目を養えるか?
一番手っ取り早くて、最も効果的なのは、「本物」をなるべくたくさん「見る」ということです。

本物とはこの場合ジェムクオリティの宝石のことです。
骨董品にしても絵画にしても、まず本物を知らなければ贋作はわかりませんよね。
日本人が目利きできないのは、そもそも、その「本物」を知らないからなんです。

話を聞いたり、本で勉強することももちろん大事なことですが、
何度と話を聞くよりは、美術館などで
展示されている実物を見た方が早いと思うはず。
つまり、物の違いを知るには、「百聞は一見に如かず」という言葉通り、
実物を見るのが一番早く、得るものも大きいことを、
皆さんはもともとよくご存じなんですね。

そして美術品では本物を見ずに、
逆に贋作ばかり見て本物を知るという方法がありますが、
宝石は偽物を見るよりも、ストレートに本物を見た方が目利きの上達が早いです。

職人の方の斎藤もとい店主曰く、「宝石は習うよりも慣れるもの」だそうです。

というのも、人間の脳というのは、本当にすごく性能がいいので、
一度本物の輝きを見れば、それを覚えてしまうからです。

たとえじっくり見ずに、ウインドウショッピングのように流し見であったとしても、
その間にも脳はしっかりジェムの光り方を覚えています。
そして、ジェムの輝きを脳が覚えてしまえば、
ほかのクオリティの宝石を見たときに
「あ、何か違う」と感じていただけるというわけです。

最初のうちは、このなんとなく何か違う、っていう感覚が大事なんですよ。
まあ、実際ジェムを見られたお客様は、
見た瞬間に「全然違う!」って驚かれる方が多いですが。

ですから、できるだけ上から何番目という番号の若いジェムを
一度でも見ることができれば、目を養うにはこれ以上ないくらい
最高の方法と言えるでしょうね。

なんだか難しいって腰がひけてませんか?
心配せずとも、目を養うっていうのはそんなに難しい話ではありません。
そもそも宝石というものは感性で見るものであって、
頭で考えるようなものではないと思うのです。

誰だってきらきら輝く透明な石を見て、
「汚い石ね」なんて思う方はいませんよね。
どちらかというと「きれい」だと感じる方の方が多いことでしょう。
つまり、もともと人間は、美しいものを美しいと思える感覚が備わっているんです。

ですから、あとは前述の「習うより慣れろ」って言葉のとおりです。
あっちよりこっちの方がきらきらしてるわ、って思えればいいのです。
それに慣れてしまえばあとは絶対に忘れません。

たとえば、自転車だって経験して、
何度もこけては体でバランス感覚を覚えたはずです。
そうして体で覚えたものは、長年乗っていなくても
ちゃんと自転車に乗れますよね?

あとは、そう、普段使ってるお味噌を変えただけで、
何か味が違うって違和感をもったり。
これって普段使ってるお味噌の味を、
あなたの舌が覚えているからですよね。

それと同じように、感覚(=体)を通して
あなたが「感じた」ものはあなたの中に必ず残ります。
そうして、きれいだと思う物の見方でさえも、
ちゃんと体が覚えてくれているという話なんです。
人間の体ってすごいですね。

そういういわけで、
「どうすれば宝石を見る目を養うことができるのか」という、
そのはじめの一歩は、
ジェムクオリティの宝石を見ること、というわけです。


ところでなぜ、見るものにいきなりジェムクオリティをお薦めするのか?
段階を踏んでとりあえずジュエリークオリティから、としないのは、

やはり店主曰く、「下はキリがないけれど、ピンはあるから」とのことです。
宝石と一口に言ってもピンからキリまであるのは、皆様もご承知の通りです。
でも一番上のピンを知っていると、変わってくるものがあります。
そう、お買い物の仕方が変わってくるんですね。

わかりやすく言えば、
エルメス等のブランド品の良さを知っている方は、
量販店の財布やバッグなど買いたいとは思わない、というのと同じです。

ブランドという上質のとても良いものを知っているのに、
どうしてそれ以外の、しかもあえてクオリティの低いものを買う気になれますか?
買う時は他の財布に目もくれず、
最初からそのブランドの売り場を見に行くんじゃないでしょうか?

ということで、
これから価値のある宝石を買いたい、だから見る目を養うぞ、
と思っている方が必要とされるべきは、ジェムだけってことなんです。
財産価値があるのは、ジェムクオリティだけですから。

つまり、一番さえ知っていれば、あとは目に入らなくなるんです。
そして、より美しいものはあなたの中で「上書き」される。
私はもっと上を知っているから、
それよりもっと美しいものを見せて欲しい、となるわけです。

これが「見る目を養う」ということなんです。
なんとなく、お分かりいただけたでしょうか?


余談になりますが、
あくまでジェムを見て目利きの仕方を覚えるというのは、
正攻法でありながらその実、突貫工事です。
もちろん、(プロとして)確かな目利きができるためには、
きちんと知識に裏付けされている必要もあります。

宝石がどういうものか、
宝石自体を学問的に学ぶ必要もありますし、
光の三原色やら色の三原色やら、
他にも学んでおいてほしいことは山ほどあります。

でも、一番良い教材は教科書ではなく、
やはり宝石そのものだということなんです。
なぜなら、そもそも紙の上の発色と、
光だけで見た色というのは根本からして違いますし、
色だけに関して言えば、
紙媒体の教科書というものは使い物になりませんので。

詳しいことはまた今度にしますが、
この辺りの色の見方の違いと言うか感覚が、
海外と日本での決定的な違いですね。
宝石を触るにあたって、わりと困る感覚の違いだと思います。

そしてもう一つ、先にもちらっと書きましたが、
ほとんどの日本人は、ジェムクオリティという本物を見たことがありません。

目利きができるということの意味は、
「実物を知っていてそれと比較ができる」ということです。
そもそも実物のジェムがどいうものか知らないで、
いったい何と比較しようというんでしょう?
想像だけで目利きをしようなんて人は誰もいないと思います。

そういう意味でも、ジェムを見るということは、
見る目を養うための基本であると言えると思います。


今回のまとめ

宝石は「百聞は一見に如かず」、「習うより慣れろ」で、
価値のある宝石を買うための見る目を養いたいのであれば、
ジェムを見ることが一番の近道であり、はじめの一歩です。
ってことですね。



さて、見る目を養うために、どんなものを見ればいいのかわかったところで、
問題は、その肝心のジェムが「どこへ行けば見られるのか?」ということなんです。
それはまた次回、後編でお話ししますね。

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