2012年5月7日

宝石業界いろはの「い」 ~世界と日本の違い(4)~


・海外へ行っても今のままでは見せてもらえる宝石のクオリティは国内と変わらない

・日本人は宝石を見る目を養う必要がある

・宝石を見る目を養うことが価値のある宝石を買うことができるスタートライン



こんにちは、Web担当の方の斎藤です。
前回に引き続き、
世界の宝石業界と日本の宝石業界がどれだけ違うのか、何が違うのかに関連して、
「宝石を買うなら海外で買うべきかどうか」をご紹介します。
この記事はシリーズになります。前回の記事はこちら

はじめに断っておきますと、内容にちょっとキツイ表現があるかもしれません。
ですが、決して悪意はなく、単純に事実として述べているだけです。ご了承ください。


「宝石は海外の方がきれい」は正しい?

さて、前回、海外市場と国内市場で流通している宝石のクオリティは全く別物である、
とお話ししました。

ならば、「じゃあ宝石は国内で買わずに海外へ行って買えばいいのね!」と、
思われた方もいらっしゃると思います。
ところが、残念ながら話はそう簡単ではないのです。

というのも、世界の宝石業界曰く、日本は「ごみ溜め」なのだそうです。
昔は「東洋」、とアジアをひっくるめてそのように言われていたようですが、
近年になって中国などはそうではなくなったようです。

この「ごみ溜め」とはどういう意味か。

ひどい言い様ですが、一応理由があって、
海外(宝石の本場)では身に着けず、工業用に使うような(たとえばブラックダイヤ等)
ほとんど価値のないくず石もきれいだと言って、喜んで身に着けるからだそうです。

価値観の多様化と言えば聞こえはいいかもしれませんが、
とどのつまり日本人は、本家本元から「宝石を見る目がない」と言われているのです。


日本人がどれくらい宝石を見る目がないのかというと、
たとえば、フレンチであれイタリアンであれ、
なんでも本場の物が一番おいしい、かどうかはともかく、
少なくとも、本場で生まれ育ったその国のシェフが一番詳しいと思います。
これはどういう料理で、どういう食材を使っているか、
その作り方まできちんと説明できるはずです。

もし、一番新鮮でおいしいものを食べたいのなら、
その地元の農家、あるいは、
漁師さんの所へいけば、海のどこに行けば何がいるとか、
捕れるとか、詳しく説明してもらえるはずです。
そして、一番おいしい食べ方を知っているのも、その地元の方のはずです。

ということは、宝石なら、日本で産出される宝石については、
地元民である日本人が一番詳しくなくてはおかしいですね?

その日本で産出される宝石と言えば、真珠と珊瑚です。
特に真珠と言えば本場、伊勢ですね。
これは海外でも、真珠と言えば「伊勢」なのだそうです。
「日本」のどこでもいいわけではなくて、日本の「伊勢」で採れたもの限定ですよ。
このように、真珠の本場が伊勢であることは、どなたでもぼんやりご存知のことと思います。
では、真珠について一番詳しいのは、伊勢の真珠屋であると誰もが思いますよね?
ところが、真珠について説明を求めると、
伊勢で真珠を作っている人ですら説明できないんです。

どういうことかというと、
花珠等の種類はわかっても、この色はどうやって出したのかとか、
この真珠はランクで言うとジュエリーなのか、ジェムなのかという判別ができないんです。

ダイヤモンドの鉱山主は、その鉱山で採れた
最も価値のある一番美しいダイヤモンド(=ジェム)をコレクションしています。
自分の山で採れた一番美しいものなのだから、残しておくのは所有者の特権ですね。
当然、その残しておくダイヤモンドは自分で選びます。
伊勢の真珠屋もそうしたい。
でも、どれが一番美しくて価値がある真珠なのかわからないから、
どれを残せばいいのかわからない。
結果的に見る目のある外国のバイヤーが、一番美しい真珠を持って行ってしまうんです。

真珠の本場は日本だから、一番美しい真珠を買えるのは当然日本人、ではないんですよ。
そもそも自分で作っているもののはずなのに、価値判断ができないのはおかしな話ですね。

どうですか?
もったいないとかそんな程度の話ではないですよね?
現在の日本人の「宝石を見る目」というのは、
地元の宝石屋ですら、宝石の価値判断ができないレベルだということです。


このように無自覚に宝石を見る目のない日本人は、
世界から長らく「ごみ溜め」と馬鹿にされていて、
海外へ宝石を買いに行っても、ショップで見せてもらえる宝石はせいぜい、
一般的な装飾用のジュエリークオリティからアクセサリークオリティの宝石ばかりです。

資産価値のある本当に美しいジェムクオリティは、店の奥へ行かないと見せてもらえません。
ですが、日本人が行っても、門前払いとは言わずとも、
当然のように奥へは入れてもらえないのが現状です。
なぜなら先述のように、
どれを見せても日本人は「見る目がない」から、細かい価値判断ができない。
だから見せても無駄だと思われているからです。

実際、私が夫(店主)と海外へ宝石の買い付けに行ったとき、
日本人というだけで店員が店の奥へ引っ込んでしまって、
呼んでも出てきてくれなかった、というようなことがありました。
かれこれ10年くらい前の話ですが。

今は、「見る目はない」けれど「お金はある」ということで、
さすがにこれほどひどい対応はないかと思いますが、どちらにしろ、
見せてもらえる宝石(商品)の質は国内と変わりはない、ということです。


つまり、本当に価値のある「良い宝石」を買おうと思ったら、
そういう「良い宝石」を持っている人、
つまり、海外の宝石屋、もとい宝石を扱う人達に、
「あなたは宝石を見る目のある人だ」と認められなければ買えないということなのです。
宝石は本来、「買う」ものではなく「買わせてもらう」もの、意外と敷居が高いのです。

ということで、まとめると、

宝石の質は海外市場で流通しているものの方が上です。
でも、我々日本人が「宝石を買うなら海外で買うべきかどうか」、
というと、必ずしもそうではない。
現状では、海外へ行っても見せてもらえる宝石の質は国内と同じ、ということです。
つまり、海外で買うのも国内で買うのも中身は変わらないので、
もしあなたが本当に良い宝石を買いたいと思うのなら、
「宝石を見る目を養うこと」。これが一番の近道です。


今回はここまでにして、次回は「宝石を見る目を養うには」について、お話ししたいと思います。

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